性犯罪の謝罪文で避けたい表現――「自分のための謝罪」になっていないか

机で謝罪の手紙を書く人のイラスト(性犯罪の謝罪文)

謝罪文は、刑事処分を軽くするために書くものではありません。
まず、被害を受けた方に対して、自分がした行為をどのように受け止めているかを伝えるためのものです。
そして、被害を受けた方には、謝罪を受け入れる義務も、読む義務も、返事をする義務もありません。
この記事は、性犯罪の事件で本人が謝罪文を書くときに、「自分のための謝罪」になってしまいやすい表現を、刑事弁護の立場から整理したものです。

弁護士 古山智隆

弁護士 古山智隆広島はちす法律事務所・広島弁護士会

このページは、広島で刑事弁護に注力する弁護士・古山智隆(広島弁護士会・弁護士登録番号60292)が解説します。広島県全域・島根県・山口県東部に対応しています。

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謝罪文は何のためにあるのか

謝罪文は、単に「申し訳ありません」と伝えるためだけのものではありません。

被害者の立場からすれば、自分に被害を与えた人が、事実を認めていない、自分がしたことの重大さを理解していない、あるいは全く反省していないという状況は、それ自体が怒りや不安を強くすることがあります。

そのため、加害者本人が、自分が何をしたのかを認め、その行為によって被害者にどのような恐怖、不安、苦痛を与えたのかを考え、それを自分の言葉で伝えることには意味があります。

少なくとも、「自分の行為によって生じた被害について理解しようとしている」ということを被害者に知ってもらうことができます。それによって、被害者の怒りや不安が少しでも和らぐこともあります。

さらに、「二度としません」と書くだけではなく、被害者に近づかない、連絡をしない、治療やカウンセリングを受ける、家族の監督を受けるなど、具体的な再発防止策を伝えることができれば、「同じことがまた起きるのではないか」という被害者の不安を少しでも軽減する材料になることがあります。

そのため、謝罪文は、自分の行為によって被害を与えてしまった人に対し、少しでも怒りや不安を軽減できる材料をお伝えするために書くものだと考えられます。少なくとも私はそう考えています。

もちろん、謝罪文を受け取ってどのように感じるかは、被害者一人ひとり異なります。「謝罪文を受け取っても意味がない」と感じる方もいるでしょうし、加害者からの言葉自体を受け取りたくない方もいます。そのことも十分に理解したうえで、謝罪文を作成する必要があります。

以下は、実際によく見る表現と、それがよくない理由です。

よくない表現

1 「深く反省しています」だけで終わる

「この度は大変申し訳ありませんでした。深く反省しています。」

この文が悪いのではありません。ただ、何について謝っているのかが書かれていません。

どの行為を、どんな場面でしたのか。それによって相手がどのような思いをしたのか、どんな時間や手間を奪ったのか。本人が考えた形跡がなければ、定型文として読まれることがあります。

ただし、行為を細かく描写することが望ましいとも限りません。読み返すこと自体が被害を思い出させる負担になる場合があります。

2 「酔っていて」「魔が差して」と理由を書く

「お酒に酔っており、判断力が落ちていました。」「ほんの出来心で、魔が差しました。」

本人にとっては事実の説明のつもりでも、相手には責任を小さく見せようとしているように読めることがあります。

生い立ちの不幸を書いても、自己中心的な人物と思われかねません。

被害を受けた方が理由を知りたいと望む場合もありますので、どこまで事情を伝えるかは被害者一人一人の意向に沿って慎重に考える必要があります。

3 自分や家族の不利益を中心に書く

「会社を解雇されてしまいます。」「家族にも迷惑をかけ、苦しんでいます。」「どんな処分でも受け入れます。」

自分が受ける不利益を中心に書くと、謝罪ではなく嘆願になってしまいます。

被害を受けた方には、加害者の仕事や家庭を守る義務はありません。

4 「許してください」「示談に応じてください」と求める

「どうか今回だけは許してください。」「示談に応じていただければ幸いです。」

謝罪文に、相手に何かを求める言葉が入ると、謝罪が交渉の道具に見えてしまいます。

許すかどうか、示談に応じるかどうかは、被害を受けた方が決めることです。

示談の話をするときも、謝罪文とは別に、弁護人が被害を受けた方の意向を確かめながら進めます。謝罪文の中で本人が求めることではありません。

5 相手の気持ちを決めつける

「一生消えない恐怖を与えてしまいました。」「どれほど傷つかれたか分かっています。」

相手の心情を理解しようとすることと、相手の気持ちを代わりに言い切ることは別です。

断定的な言い方は、「分かったつもりになっている」と受け取られるおそれがあります。

育ってきた環境なども違う他人のことを理解することは困難ですので、被害者の気持ちを想像したからと言って被害者のことをわかったつもりになるのはやめましょう。

再発防止は具体的に、見返りなしで

「二度としません」という決意だけでは、本人以外には確かめようがありません。

お酒をやめる、通院や相談につながる、スマートフォンの使い方を変える、家族に生活を見てもらうなど、実際に始めたことがあれば、事実として淡々と書くことは考えられます。

ただし、「これだけのことをしたのだから許してほしい」という書き方にはしません。被害者に安心してもらうために伝えるのであって、駆け引きの道具ではありません。

渡し方も、被害者が決めること

被疑者・被告人は、通常、被害者の連絡先を知りません。謝罪文は、弁護人がまず内容を確認し、検察官に被害者の連絡先を尋ねたうえで、弁護人から渡す手順が一般的です。

検察官が被害者の氏名・住所などが被告人に知られないよう求めることもあります。

手紙を出すときは、同居の方に被害を知られていない可能性にも気を配ります。法律事務所の封筒を避ける、謝罪文を別の封筒に入れるなどの工夫も検討します。

被害者の方が謝罪文を受け取らないと決めたときは、その意向を尊重する必要があります。

最後に

謝罪文を書いたからといって、被害を受けた方がこれを読まなければならないわけでも、謝罪を受け入れなければならないわけでもありません。

この記事で書いた内容は一般的な考え方であり、特定の結果を保証するものではありません。実際の事件では、被害を受けた方の意向や事案によって、対応は大きく異なります。

ご家族やご自身が性犯罪の事件の当事者になり、謝罪文のことで悩んでいる方は、早めに弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた弁護士

弁護士 古山智隆

弁護士古山 智隆

広島はちす法律事務所
広島弁護士会(登録番号60292)

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出典:刑事訴訟法299条の3(e-Gov法令検索)、『情状弁護ハンドブック』1.9 謝罪文(Q43・Q44)、『刑事弁護ビギナーズ ver.2.1』被害弁償・示談交渉の手紙の出し方